障害年金申請のポイント
障害年金は申請できる条件が複雑で、そのうえ提出書類もいろいろとそろえることになり、手続きがとても面倒な制度です。ここでは、そのポイントを手続きの順を追って整理してみました。
(1)初診日の加入年金を確かめる
(2)申請窓口へ相談に行く
(3)初診日の証明を取る
(4)診断書を書いてもらう
(5)申立書を書く
(6)必要書類を持って申請する
(7)裁定通知を確かめる
(8)手続きがうまくいかない場合
(1)初診日の加入年金を確かめる
年金の申請窓口は、初診日(障害の原因となった病気で初めてお医者さんにかかった日)の時点で加入している年金によって違います。まずは、初診日がいつ頃だったかを思い出してください。今は、何月何日まではっきりしなくても構いません。
糖尿病や腎臓病など、経過が長い方の場合、何年も前のことでよく思い出せないという方もおられます。家族の方に聞いてみたり、日記やスケジュール帳を見直したりもしてみましょう。
初診日の見当をつければ、加入していた年金を思いだしましょう。もし、初診日が20歳未満で、年金に加入していない時であれば、自動的に国民年金の窓口になります。特に、結婚や出産で退職した方、脱サラで自営業を始めた方など加入年金が変わったことのある方は気をつけてください。思い出せない場合は、初診日を基に年金の申請窓口を順に訪ねることになります。
年金の申請窓口は次の通りです。
厚生年金の方で現在も厚生年金加入中の方=事業所を管轄する社会保険事務所
厚生年金の方で現在は他の年金か未加入の方=現住所を管轄する社会保険事務所
国民年金の方/20才未満の初診で年金未加入だった方=市区町村役所
共済年金の方=各共済組合窓口
(2)申請窓口へ相談に行く
初診日と加入年金が分かれば、次は申請窓口へ出掛けましょう。
持っていくもの=年金手帳 印鑑(認め印で良い)
窓口では、障害年金の申請を希望していることとあわせて、初診の時期と現在の病気や障害の状態を説明します。病気や障害の状態は大まかな内容でも良いのですが、どの程度の状態か分かってもらえるように説明するほうが確実です。
たいていの場合、初診の時期から年金に加入していたかどうか、それと初診までに保険料をきちんと納めていたかどうかを確認のうえ、申請書類を渡してくれます。この時、申請書類を一式渡すこともあれば、まず初診日の証明だけを渡す場合も見られます。どちらの場合も次の段階へ進めば良いでしょう。
(3)初診日の証明を取る
次の段階は初診日の証明を取ることです。障害年金の受給には「初診日に年金に加入していること」という条件があります。そのため、申請する人の話を裏付けとなる証明書の提出を求められます。初めてかかった医療機関に証明書の記入をお願いしましょう。
この時、「当時のカルテを処分しているので証明できない」ことがよくあります。その場合は、その次にかかった医療機関に頼みます。そこもダメならその次にかかったところ、それでもダメならまた次の医療機関....というように証明が取れる医療機関をたどっていきます。そして、申請窓口へは、「カルテが処分されており証明ができないと言われた」と申し出ましょう。
また、診察してくれていた主治医の方が退職されているため、証明できないと言われる場合もあります。その場合には、カルテの記載内容の証明という形で、他の医師や医療機関の名前で発行してもらうようお願いしましょう。この申し出を受け入れてもらえなければ、申請窓口の担当者の方から医療機関へ連絡してもらうよう、交渉してみます。
(2)の段階で、初診日の証明書をまずもらうよう言われた方は、証明書を持ってもう一度申請窓口を訪ねることになります。そのうえで、申請書類を受け取って次の段階へ進みます。
(4)診断書を書いてもらう
いよいよ障害年金申請のヤマ場である診断書を書いてもらう段階です。診断書は現在かかっている主治医に頼むのが原則です。特に糖尿病や腎臓病、肝臓病では過去3回分の検査結果を記入するので、一見でかかった医療機関では必要な内容を書いてもらえないと思います。つまり、皆さんの病状を一番よく知ってくれているお医者さんに書いてもらうのが、もっとも大切なことなのです。ただし、障害年金の申請用の診断書は記入内容が多く、お医者さんにとっても書くのが大変な代物のようです。初診日の証明書のコピーを付けるなど、御協力をお願いします。
中には現在どこの病院にもかかっていないという方もあると思います。その場合には、とりあえず以前かかっていた医療機関に相談してみて、無理ならば近くの医療機関にお願いしましょう。
(5)申立書を書く
医療機関から診断書を受け取れば、申立書を書きましょう。申立書はこれまでの治療経過や、厚生年金の方は生活状況を記入するものです。経過の中で、日付は初診日の証明書や診断書の内容を参考に、同じ日付を使いましょう。もし、申立書と診断書の日付が食い違っていると、申請時にどちらが正しいのか確認を取るなど余分な手間が増えることになります。同じ日付にして、つじつまを合せておきましょう。
よく「どこまで書けば良いのですか」と質問されます。だいたい、治療の内容、医師から受けた説明や日常生活についての注意されたこと、入院期間を書いておけば問題なさそうです。もちろん、覚えている範囲で構いません。分量があまりに少ないとクレームを言われたという方もあるので、病気の経過については3行以上は書くようにしましょう。
ただし、申立書の内容は障害年金の裁定に大きく影響するものではなさそうです。あまり神経質にならずに、軽い気持ちで書いてみてください。
(6)必要書類を持って申請する
ここまで長い道のりでした。ようやくたどり着いたのが実感ではないでしょうか。
さて、必要な書類を揃えればいよいよ申請に行きます。出掛ける前に、もう一度申請書類を見直して、忘れているものがないかどうか確かめておきましょう。診断書に記入漏れがあると、もう一度医療機関へ追加記入をお願いに行きます。1回で申請できればラッキーと考えて、2回は足を運ぶぐらいの気持ちで出掛けましょう。
たまに、書類を揃えたものの、申請に行くのが遅くなっている方がおられます。診断書や証明書の類いは発行日から3ケ月以内のものを有効とみなされます。ですから、あまり遅くなると診断書や証明書をあらためて取り直す、という面倒なことになりかねません。何とか都合をつけて、できるだけ早く申請に行くことが大切です。
無事、申請手続きが終わると一安心です。後は裁定通知が届くまで、約3ケ月ほど待つことになります。
申請後、時々診断書の内容についてのお尋ねが来ることがあります。この場合には、内容をよく読んで、該当する医療機関にて書類を作成してもらい、期限までに返送することになります。カルテが処分されている医療機関での証明を求められた場合でも、その旨を書いて返送しましょう。皆さんからの返事がないと、年金の裁定が進まなくなります。
(7)裁定通知を確かめる
いよいよ裁定通知が届きました。結果はいかがでしょうか?
お名前とあわせて年金額や障害等級を確かめておきましょう。もし、障害等級や年金不支給(つまり障害年金に該当しなかったということ)という結果に疑問があれば、通知を受け取ってから60日以内に都道府県の年金審査官へ申し出て、再審査を要求することができます。
初めての振込日が来れば、必ず振り込まれているかどうかも、念のために確かめておきましょう。
振込が確認できれば安心です。
なお、これからは1年に1回、誕生月に現況届を提出することになります。この現況届を忘れると、年金の振込が停止されるので、必ず期日までに提出しましょう。また、何年かに1度は診断書付きの現況届を提出します。診断書の準備も早めに始めるように注意してください
(8)手続きがうまくいかない場合
*手続きがうまく行かない場合
いろいろな場合に手続きが行き詰まるものですが、例を挙げて対策を御案内しましょう。
問1「事業所を管轄する社会保険事務所が遠方にあり、窓口に出向くことが出来そうにありません」
答1 この場合、現住所を管轄する社会保険事務所で手続きできます。あらかじめ、事業所の管轄の社会保険事務所と現住所の管轄の社会保険事務所に、電話相談ということで話をつけておきましょう。
問2「保険料をおさめていないのですが、今からまにあいますか?」
答2 保険料は2年前までさかのぼって支払うことができます。それ以前の未納分は、法律上どうすることもできません。もし、初診日が2年以内であれば、未納分の保険料を支払ったうえで、年金申請を始める方法が考えられます。また、未納分を支払うことで、保険料納付要件を満たす場合、お早めにお支払いすれば良いと思います。
問3「初診日の頃、年金を掛けていたかどうか覚えがないのですが」
答3 窓口では年金の加入状況の調査もお願いできます。これまでの加入期間を調べたうえで、初診日に加入していた年金で申請手続きを始めると良いでしょう。
問4「初診日がいつ頃か、思い出せない」
答4 これまで年金に継続して加入しており、保険料も全額納付している場合、年金加入中に初診があったことさえ覚えていれば問題ないでしょう。適当に日付を申告して手続きを進めれば良いと思います。もし、保険料の未納期間があったり、年金に加入していない時期があれば、年金の加入状況と保険料納付状況の調査を申請し、同時に初診の医療機関にも初診日の確認をお願いすれば良いと思います。
問5「窓口で透析していないので申請できないと言われたが本当ですか?」
答5 透析療法をしているかどうかは障害認定の要件ではありません。あくまで腎臓の障害程度によるものなので、もう一度窓口とかけあってみましょう。
問6「窓口で透析していても年金はおりないと言われたのですが、手続きしても無駄なのでしょうか?」
答6 障害年金が支給されるかどうかは行政の審査結果によります。診断書を書く医療機関にも、相談した相手にも、もちろん窓口の担当者でさえも、この人に障害年金が支給されるかどうかを決める権限はありません。ましてや、障害程度を知らない人から「障害年金はおりない」なんて言われる筋合いはありません。それに、年金は申請しないと支給されない仕組みなので、「手続きしても無駄」となると永遠に支給されることはありません。もし障害年金を受給しようというお考えなら、めげずに手続きを進めましょう。
問7「初診の医療機関で証明が取れません」
答7 まず、初診の医療機関がなくなっている場合やカルテが処分されている場合、その次に受診した医療機関に証明をお願いすれば問題ありません。次もダメならまたその次へ、そこもダメならまた次のところ....とたどっていくことになります。この時、証明をお願いする医療機関へは、前の医師からの紹介状が残っていればその内容も記載してもらうようお願いしてみてください。
問8「初診日が確認できないと受付けられないと言われた」
答8 初診日の証明は必ず求められますが、証明が取れないことを理由に申請を拒否することはできません。証明が取れない場合、家計簿や日記、スケジュール帳で申し立てることもできます。当時の診断書や証明書(コピーでも可)でも、申し立てを裏付ける資料です。資料も何もない場合で申請を拒否された場合、その対応についての根拠を示す明文化されたものを提示するよう窓口でお願いしましょう。何も提示できなければ、申請拒否に対する不服申し立てをすると良いでしょう。
問9「同じ診断書を2枚出すように言われたのですが、2枚も必要でしょうか?」
答9 おそらく初診から1年6ヶ月経過してからの申請で、事後重症かどうか不明のためだと思います。同じ診断書でも、1枚は初診から1年6ヶ月の時点(つまり障害認定日)の状態、もう1枚は現在の状態、と基準となる時期が違っているのではないでしょうか。この場合、2枚提出すると、1年6ヶ月の時点の状態についても障害年金支給の審査対象となります。したがって、状態によっては過去にさかのぼって年金が支給されます。もちろん、提出したから必ず支給されるわけではありませんし、初診証明と同じく診断書が書いてもらえないこともあります。現在の状態により申請する場合は、窓口に事後重症と申し出れば良いでしょう。
問10「障害年金を申請しましたが、何の知らせもありません」
答10 たいていの方は、申請から審査結果の通知がくるまで3ヶ月ほどかかっています。3ヶ月を過ぎて何の連絡もない場合、心配な方は窓口にお尋ねになると良いと思います。半年以上過ぎている場合は、事情を調べてもらったほうが良いでしょう。
問11「身体障害者手帳は1級なのに、年金が1級にならないのはなぜですか」
答11 身体障害手帳は身体障害者福祉法に基づく制度であり、障害年金は厚生年金保険法や国民年金法に基づく制度と、2つはまったく別々の制度です。当然、障害の程度についても別々の基準によって判断されます。したがって、身障手帳と障害年金の等級が同じにならないこともありえます。ただし、障害等級は血液検査の結果や身体症状を含めた障害程度によるものです。「透析をしているから×級」というものではありません。年金の等級審査に疑問がある場合には、不服申し立てを行って審査結果を確かめることができます。疑問がある方は活用しましょう。
問12「障害厚生年金を受給することになりましたが、厚生年金の保険料は払い続けないといけないのでしょうか?」
答12 当然です。すでに年金を受給しているからと言って、保険料は掛け捨てにはなりません。もし、今後別の障害による障害年金や老齢厚生年金を受給する場合に、これからの保険料納付状況が要件となるからです。場合によっては今後申請する年金のほうが年金額が高くなることもあります。なお、障害基礎年金を受給される方は、保険料の納付が免除されるので、その手続きをしておきましょう。
問13「現況届を出し忘れました。年金はどうなるのでしょうか?」
答13 まず、現況届が送られてきた封筒を見て、その機関へ電話をかけて出し忘れたことを連絡します。そのうえで大急ぎで現況届を提出しましょう。もし、次回の年金支給日が近い場合、振込が停止されていることもあります。現況届の確認がすめば元通りに振り込まれるので、安心してください。現況届を提出しないと最悪の場合、年金を受給する権利を失うことになります。面倒くさいものですが、来年から忘れずに提出しましょう。
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